会社の健康保険は住所ではなく勤務先に紐づいているため、引越しても保険者は変わりません。役所での手続きは不要ですが、勤務先への届出だけは必要です。
会社の健康保険は「住所」ではなく「勤務先」に紐づいている
引越しの手続きを調べていると健康保険の話が必ず出てきますが、その多くは国民健康保険の説明です。会社員の場合は事情がまったく違います。
違いは誰が保険者かという一点です。
| 保険者 | 引越しの影響 | |
|---|---|---|
| 国民健康保険 | 市区町村(と都道府県) | 住所が変われば保険者が変わる |
| 会社の健康保険 | 全国健康保険協会(協会けんぽ)/健康保険組合 | 住所が変わっても保険者は変わらない |
会社員が加入する健康保険(被用者保険)は、勤務先の事業所を通じて加入する仕組みです。住んでいる場所とは関係がないため、県外へ引越しても加入している健康保険はそのまま続きます。
したがって、転入届を出しに行った役所で、国民健康保険の窓口に立ち寄る必要はありません。「国民健康保険の手続きはお済みですか」と案内されても、勤務先の健康保険に加入していると伝えれば完了です。被扶養者になっている配偶者や子どもも同じ扱いです。
国民健康保険に加入している方の手続きについては「国民健康保険の転出・転入手続き|県外へ引越すときの流れ」をご覧ください。
日本年金機構への住所変更届も原則不要
かつては、引越しをすると勤務先を通じて「被保険者住所変更届」を提出する必要がありました。現在はこれも原則として不要になっています。
日本年金機構は、マイナンバーと基礎年金番号が結びついている被保険者であれば、原則として届出は不要としています。住民票を移せば、その情報が連携されるためです。
ただし、次に当てはまる場合は届出が必要になります。
- マイナンバーと基礎年金番号が結びついていない人
- マイナンバーを持たない海外居住者、短期在留外国人
- 健康保険組合の被保険者、および70歳以上で健康保険のみに加入している人
- 住民票の住所以外の居所を登録している人、その登録を解除する人
ここで見落としやすいのが健康保険組合に加入している場合です。大企業などが独自に設立している健康保険組合は日本年金機構とは別の団体なので、組合への住所変更の届出が必要になります。自分が協会けんぽなのか健康保険組合なのかは、保険証や資格情報の発行元で確認できます。判断がつかないときは勤務先の担当部署に聞くのが確実です。
それでも勤務先への届出は必要
健康保険の手続きが不要でも、勤務先に住所変更を届け出ることは必要です。理由は健康保険以外にあります。
通勤手当と通勤経路。 引越しによって通勤ルートも交通費も変わります。届出が遅れると支給額の精算が発生します。
住民税の特別徴収。 給与から住民税を天引きしている場合、翌年度からの納付先は新しい住所の市区町村になります。この切り替えは勤務先が手続きしますが、そのためには住所変更の情報が必要です。住民税の仕組みについては「なぜ旧住所の自治体から住民税を請求される?1月1日居住地主義を解説」で解説しています。
給与明細や源泉徴収票などの送付先。 郵送で受け取っている場合、旧住所に送られ続けることになります。
テレワークを前提に地方へ移住する場合は、これに加えて就業場所の変更や在宅勤務手当の扱いなど、確認すべきことが増えます。「テレワークで地方移住する人の会社・市役所への手続き」もあわせてご覧ください。
保険料は引越しでは変わらない
「引越し先によって保険料が変わるのでは」と気にする方がいますが、会社員の場合は変わりません。ここは国民健康保険との大きな違いです。
協会けんぽの健康保険料率は都道府県ごとに異なります。ただし適用されるのは、加入者本人の住所ではなく、勤務先の事業所が所在する都道府県の料率です。会社の所在地が属する協会けんぽの都道府県支部の料率が使われる仕組みで、従業員がどこに住んでいるかは関係ありません。
つまり、東京の会社に勤めたまま地方へ移住しても、健康保険料率は東京支部のままです。逆に、転勤などで所属する事業所そのものが別の都道府県に変わると、料率が変わる可能性があります。
国民健康保険が住所地の市区町村ごとに料率が決まるのとは、考え方が正反対です。移住にともなって会社員から自営業に切り替える場合は、この違いが負担感の変化として表れます。
国保から会社の健康保険に切り替わるときは自分で脱退届
注意が必要なのは、引越しと就職が重なるケースです。
会社の健康保険への加入手続きは勤務先が行いますが、それまで入っていた国民健康保険をやめる届出は自分でしなければなりません。 自動では脱退になりません。
この届出を忘れると、国民健康保険料の請求が続きます。あとから脱退の届出をすれば保険料は再計算されますが、その間の納付書は届き続けますし、放置すれば未納として扱われます。月の途中で加入・脱退した場合の保険料の考え方は「月の途中で引越した場合の国民健康保険料|二重請求に見える理由」で説明しています。
移住を機に転職する場合は、「新しい会社の健康保険に入る」「国保をやめる」「住民票を移す」の3つが同時期に走ります。どれか1つが自動で処理されると思い込むと漏れるので、それぞれ担当が違うことを意識しておいてください。
退職や任意継続が絡む場合は扱いが変わる
会社を辞めてから移住する場合は、そもそも被用者保険を離れることになります。選択肢は主に3つです。
- 国民健康保険に加入する
- 健康保険の任意継続被保険者になる(原則2年間)
- 家族の被扶養者になる
このうち任意継続を選んだ場合、住所が変わったときは加入先(協会けんぽの支部または健康保険組合)へ住所変更の届出が必要になります。すでに退職していて勤務先が手続きしてくれないためで、届出が漏れると保険料の納付書や重要な通知が旧住所へ送られてしまいます。
退職と移住が重なる場合の健康保険・年金・住民税の全体像は「退職と地方移住が重なる場合の健康保険・年金・住民税」で整理しています。
年金の住所変更が必要かどうかは、引越しで国民年金の住所変更は必要?届出が不要になるケースで解説しています。
まとめ
- 会社の健康保険は勤務先に紐づいているため、引越しても保険者は変わらない。役所の国民健康保険窓口での手続きは不要で、被扶養者も同じ扱い
- 日本年金機構への住所変更届も、マイナンバーと基礎年金番号が結びついていれば原則不要。ただし健康保険組合の加入者は組合への届出が必要
- 健康保険の手続きが不要でも、通勤手当・住民税の特別徴収・書類の送付先のために勤務先への住所変更の届出は必要
- 協会けんぽの保険料率は事業所の所在地で決まるため、本人が引越しても保険料は変わらない。国保が住所地で決まるのとは正反対の仕組み
給与から住民税が天引きされている会社員の切り替え手続きは、会社員が引越したときの住民税|特別徴収の切り替え手続きで解説しています。
引越しや転職でマイナ保険証の登録がどうなるかは引越し・転職でマイナ保険証はどうなる?をご覧ください。
公式情報・確認先
この記事は2026年7月26日に確認しました。必要書類・窓口・保険料は自治体や加入状況で異なるため、手続き前に最新の公式情報をご確認ください。


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