引越しで火災保険はどうなる?解約・返戻金と新居での加入

家を守る盾と円マークのイラスト 住まい・ライフライン

引越しでは、火災保険は住所変更では済まないことがほとんどです。建物が変われば別の契約になるためで、旧居の解約と新居の新規加入を、自分から申し出て行う必要があります。 そして地方移住の場合、保険料は移住先の市区町村によって変わります。しかもその区分は、契約前に自分で調べられます。

まず、「異動」なのか「解約と新規」なのかを見分ける

火災保険は建物にかける保険です。人ではなく建物に紐づいているため、住む場所が変われば原則として契約も変わります。

引越しの形 火災保険の扱い
賃貸から賃貸(同じ保険会社で継続) 異動(保険の対象物件の変更)で対応できる場合がある
持ち家を売って新居を買う 旧居の契約を解約し、新居で新規加入
持ち家を残して転居(賃貸に出す・空き家にする) 用途が変わるため契約内容の見直しが必要。放置は危険

見落とされやすいのが3つ目です。地方移住では、都市部の持ち家を売らずに賃貸に出したり、しばらく空き家のまま置いたりするケースがあります。住宅物件として契約している火災保険は、賃貸に出すと用途が変わり、そのままでは適切な補償にならないことがあります。 空き家も同様で、保険会社によっては住宅物件として扱えなくなります。売らない選択をしたときこそ、保険会社への連絡が必要です。

なお、住所変更の届出そのものについては「生命保険・火災保険・自動車保険の住所変更を忘れると起きること」で扱っています。この記事は、その先にある「契約自体をどうするか」の話です。

移住先の市区町村で保険料が変わる。しかも事前に調べられる

ここが、地方移住でいちばん実用的な話です。

2024年10月1日以降を保険始期とする契約から、水災(洪水・内水氾濫・土砂災害)の保険料が市区町村ごとに5段階に分かれました。 損害保険料率算出機構が2023年6月に届け出た参考純率の改定によるもので、住宅向け火災保険の参考純率は全国平均で13.0%の引き上げ、あわせて水災料率が細分化されました。

区分は1等地(最も安い)から5等地(最も高い)までの5つです。

項目 内容
区分数 5区分(1等地〜5等地)
地域の単位 市区町村別
1等地と5等地の差 水災部分の保険料で約1.2倍
適用 2024年10月1日以降を保険始期とする契約

細分化に使われたデータは、外水氾濫(河川の氾濫)が約56%、内水氾濫・土砂災害が約44%という比重です。洪水浸水想定区域図と水害統計、地形データが根拠になっています。

そして重要なのは、この等地が公開されていて、誰でも市区町村名から検索できることです。損害保険料率算出機構が「水災等地検索」を公開しています。

移住は、住む市区町村を自分で選べる数少ない機会です。候補が複数ある段階で等地を見ておけば、同じ県内でも水災の保険料が違うことが分かります。もちろん等地だけで移住先を決める話ではありませんが、等地が高いということは、その地域が実際に水害リスクを抱えているという意味でもあります。保険料の話としてではなく、ハザードの話として読むほうが有益です。 自治体が公開しているハザードマップとあわせて見てください。

1等地と5等地の差が約1.2倍というのは、水災部分に限った比率です。火災保険料全体が1.2倍になるわけではありません。この点を大きく書いている記事もあるので、数字の意味は正確に押さえておいてください。

保険期間は最長5年。「10年契約」はもうできない

かつて火災保険は最長10年の契約ができ、長期一括払いにすると保険料が大きく割り引かれました。「引越しを機に10年でまとめて払うとお得」と書かれた記事は今も残っています。

この10年契約は、2022年10月以降できなくなりました。現在の上限は5年です。 気象リスクの変化が速く、長期のリスク評価が難しくなったことが理由とされています。

とはいえ、5年でも一括払いにすれば年払いより割安になります。移住直後は出費が重なるので、資金繰りとの兼ね合いになります。判断材料としては次のとおりです。

  • 5年一括払い:総額は安くなるが、初期の現金負担が大きい
  • 年払い:負担は平準化されるが、総額は増える。毎年の更改時に見直しやすい

移住1年目は、家の使い方や必要な補償が固まりきっていないことがあります。古い家を買って手を入れながら住む予定なら、あえて短めにして翌年見直すという考え方もあります。

築40年以上の家は、契約自体が厳しくなってきている

これは地方移住で中古住宅や空き家を買う人に直接効く話で、最近になって動いた部分です。

各社が築年数による引受条件を厳しくしています。たとえばソニー損保は、2025年10月1日以降を保険始期とする契約について、建物竣工から40年以上の場合は保険期間を1年に限定するという商品改定を行いました。理由として、自然災害リスクが時間とともに大きく変わることが見込まれ、長期のリスク評価が難しくなっていることを挙げています。あわせて、従来「25年以上」でひとくくりだった築年数の区分を細分化しています。

これは1社の商品改定であって、全社共通のルールではありません。ただ、築古物件の引受を絞る方向は業界全体の流れとして現れています。

地方移住では、築40年、50年という物件が当たり前に候補に上がります。空き家バンクの物件はなおさらです。ここで起きうるのは次のようなことです。

  • 長期契約が組めず、毎年更新になる
  • 保険料が想定より高い
  • 補償内容に制限がつく、あるいは引受を断られる

物件を決める前に、保険が付けられるかを確認しておくのが安全です。 建築年、構造(木造・鉄骨造など)、屋根と外壁の状態が分かる情報を用意して、保険会社か代理店に見積もりを取ってください。購入後に「保険が付かない」と分かるのがいちばん困ります。住宅ローンを使う場合、火災保険への加入が実質的な条件になっていることも多く、保険が付かないと融資自体に影響します。

住宅を取得したときにかかる税金は「地方移住で家を買ったときの税金|不動産取得税・固定資産税・登録免許税」で整理しています。

旧居の火災保険:申し出ないと返ってこない

長期一括払いで契約している場合、中途解約すると未経過期間に応じた解約返戻金が戻ります。 保険料が丸ごと無駄になるわけではありません。

計算は、保険会社ごとに定められた未経過料率を使うのが一般的です。

解約返戻金 = 払込済保険料 × 未経過料率

端数の日数は1か月に切り上げて数えるのが通例です。

問題は、この解約が自動では行われないことです。

引越して住まなくなっても、保険会社は何も知りません。契約者が保険会社か代理店に連絡して初めて解約手続きが進みます。連絡しなければ契約は残り続け、返戻金も戻りません。旧居を売却した場合、所有者でなくなった建物の保険料を払い続けることになります。

住宅ローンが残っている場合は、まず金融機関へ

もうひとつの注意点です。住宅ローンを組んで購入した家では、火災保険に金融機関の質権が設定されていることがあります。 質権が設定されている契約は、金融機関の同意なしには解約できません。

売却してローンを完済するなら、決済のときに質権も解除されるのが通常の流れです。ただ、ローンを残したまま転居する場合や、賃貸に出す場合は、先に金融機関へ確認してください。順番を間違えると手続きが止まります。

住宅ローンを返済中に引越す場合の住所変更については「住宅ローン返済中に引越しするときの住所変更|転勤・賃貸前に確認すること」で解説しています。

賃貸の場合は「不動産会社経由」が落とし穴

賃貸で入居時に加入した火災保険(借家人賠償責任保険を含むもの)は、不動産会社や管理会社を通じて契約していることが多く、退去したら自動で解約されると思い込まれがちです。実際には、解約は契約者からの申し出が必要です。2年契約の一括払いが多いため、途中退去なら返戻金が発生します。金額は数千円規模のことが多いのですが、放置すれば戻りません。

手続きの順番

  1. 移住先の候補が絞れた段階:市区町村ごとの水災等地とハザードマップを確認する
  2. 物件を決める前:築年数と構造を伝えて、火災保険の見積もりが取れるかを確認する(特に築40年以上)
  3. 新居の契約が決まったら:新居の火災保険を申し込む。保険開始日は引渡日・入居日に合わせる
  4. 旧居を離れるとき:質権の有無を確認し、必要なら金融機関の同意を得たうえで解約を申し出る
  5. 旧居を残す場合:賃貸に出す・空き家にするなら、用途変更を保険会社に連絡する

新居のライフラインについては「地方移住で戸惑うライフライン|プロパンガス・浄化槽・井戸水・灯油」もあわせてご覧ください。

空き家バンク物件の探し方と契約前の確認事項は「空き家バンクの使い方|物件の探し方から契約までの流れ」にまとめています。

まとめ

  • 火災保険は建物にかける保険。引越しは住所変更では済まず、旧居の解約と新居の新規加入になるのが原則。持ち家を賃貸に出す・空き家にする場合も用途変更の連絡が必要
  • 2024年10月1日以降を保険始期とする契約から、水災の保険料が市区町村ごとに5区分(1等地〜5等地、最大約1.2倍差)。等地は公開されていて事前に調べられる。保険料としてよりその地域の水害リスクの目安として読むと有益
  • 火災保険の保険期間は2022年10月から最長5年。「10年一括でお得」と書かれた記事は改定前の内容
  • 築古物件の引受は厳しくなっている。ソニー損保は2025年10月1日以降始期の契約で築40年以上は保険期間1年に限定。空き家バンク物件などは、買う前に保険が付くかを確認する
  • 解約返戻金は未経過期間に応じて戻るが、申し出なければ解約されず返ってこない。住宅ローンの質権が設定されていると金融機関の同意が必要。賃貸の火災保険も退去で自動解約にはならない

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