国民健康保険料は日割りではなく月割りで計算され、脱退した月の保険料は旧住所の市区町村では発生しません。旧住所と新住所の両方から通知が届いても、対象となる期間は重なっていません。
国保料は「日割り」ではなく「月割り」で計算される
まず押さえておきたいのが、国民健康保険料の計算単位です。日割りではなく、月単位です。
川崎市の案内では、計算方法が次のように説明されています。
- 加入したとき:加入した月から翌年3月までの月割り
- 脱退したとき:脱退した月の前月までの月割り
つまり、月の1日に引越そうと31日に引越そうと、保険料の月数は変わりません。9月15日に転出した場合、旧住所の市区町村での保険料は4月から8月までの5か月分になります。9月分は発生しません。
川崎市はさらに、同じ月のうちに加入と脱退の両方があった場合(7月15日加入・7月25日脱退など)は保険料がかからない、とも案内しています。この扱いは自治体によって異なることがあるため、短期間で二度引越すようなケースでは窓口に確認してください。
だから旧住所と新住所で月は重ならない
月割りの仕組みが分かると、「二重に払っているのでは」という不安は解消します。
9月15日に県外へ引越した場合を整理すると、こうなります。
| 対象期間 | 保険料の月数 | |
|---|---|---|
| 旧住所の市区町村 | 4月〜8月 | 5か月分 |
| 新住所の市区町村 | 9月〜翌年3月 | 7か月分 |
脱退した月(9月)は旧住所では発生せず、加入した月(9月)から新住所で発生します。9月がどちらか一方にだけ含まれる設計になっているので、期間の重複は起きません。合計すれば、きちんと1年分(12か月分)です。
それでも「二重取り」に見えてしまう3つの理由
仕組み上は重複していないのに、実際には多くの人が混乱します。理由は主に3つあります。
1つめは、納付書の「期」と「月」がずれていることです。 国民健康保険料は年間の総額をまず計算し、それを8回〜10回程度の納期に分割して納めます。1回の納付が1か月分に対応しているわけではありません。そのため「5か月しか加入していないのに、納付書が何枚も来る」「1枚あたりの金額が月額と合わない」という状態が起きます。金額の妥当性を月数で確かめようとすると、必ず食い違います。
2つめは、旧住所の精算通知と新住所の納付書が同じ時期に届くことです。 どちらも引越し後1〜2か月のうちに届くため、封筒を2通同時に受け取ると「両方から請求されている」と感じます。中身を見ると対象期間が違うのですが、通知書は期間が小さく書かれていて気づきにくいのが実情です。
3つめは、年度途中で金額そのものが変わることです。 世帯構成や所得の変更があると保険料は再計算されます。引越しにともなって世帯員が減った・増えたという場合、単純な月割りだけでは説明のつかない金額になります。
旧住所での精算はどうなるか
転出の届出をすると、旧住所の市区町村では年間保険料が再計算されます。すでに納めた額との差額が精算される仕組みです。
納めすぎていた場合は還付になります。河内長野市の案内では、変更前にすでに納付されている場合、差額について還付通知が送られると説明されています。還付を受け取るには口座を届け出る書類の返送が必要になるのが一般的です。
不足していた場合は、差額の納付書が届きます。
ここで注意したいのが、還付通知が旧住所に送られてしまうケースです。転出届を出していても、通知が行き違いになることがあります。郵便物の転送届を出しておけば取りこぼしを防げます。転送届については「引越し後の郵便物転送届|e転居の使い方と転送期間の注意点」で解説しています。
もうひとつ、口座振替に使っていた銀行口座は、精算が終わるまで解約しないでください。 引落しができないと未納扱いになり、あとから催告が届くことになります。
引越し先の保険料が同じとは限らない
「5か月分+7か月分=1年分」なので総額も同じ、と考えたくなりますが、そうはなりません。国民健康保険料の料率は市区町村ごとに決められているためです。同じ所得・同じ世帯構成でも、引越し先によって月あたりの金額は変わります。
そしてもうひとつ、移住したばかりの人がつまずきやすい点があります。国保料は前年の所得をもとに計算されるということです。
都市部で働いていた人が地方へ移住し、収入が下がったとします。それでも移住した年度の保険料は、前年(収入が高かった年)の所得で計算されます。「収入が減ったのに保険料が高い」という状況が生じるのはこのためです。同じ理屈で住民税も課税されるので、移住1年目は社会保険料と税の負担が重くなりがちです。住民税の仕組みについては「なぜ旧住所の自治体から住民税を請求される?1月1日居住地主義を解説」をご覧ください。
なお、退職や廃業で所得が大きく減った場合、保険料の軽減や減免を受けられる制度を設けている市区町村があります。該当しそうなときは、納付書が届いてから慌てるのではなく、加入の届出をする時点で窓口に相談しておくとよいでしょう。
こんなときは窓口へ
最後に、実際にトラブルになりやすいパターンを挙げておきます。
転出したのに旧住所から納付書が届き続ける。 転出届は出したものの、国民健康保険の資格喪失の届出が済んでいない可能性があります。住民票の窓口と国保の窓口は別なので、片方だけで終わっているケースです。手続きの全体像は「国民健康保険の転出・転入手続き|県外へ引越すときの流れ」で確認してください。
就職して会社の健康保険に入ったのに、国保の請求が続く。 会社の健康保険への加入は勤務先が手続きしますが、国保をやめる届出は自分でする必要があります。自動では脱退になりません。引越しと就職が重なる場合は特に見落とされがちです。
いずれの場合も、放置すると未納として扱われてしまいます。通知の内容に納得できないときは、対象期間と月数を確認したうえで、遠慮なく窓口に問い合わせてください。
会社の健康保険(被用者保険)に加入している場合の扱いは、会社員が引越したときの健康保険はどうなる?本人の手続きが不要な理由で解説しています。
引越した年の確定申告をどこの税務署に出すかは、引越した年の確定申告はどこの税務署に出す?で解説しています。
まとめ
- 国保料は日割りではなく月割り。加入した月から、脱退した月の前月まで計算されるため、旧住所と新住所で対象月は重ならない
- 「二重取り」に見える主因は、納付書の「期」と「月」がずれていること。年額を8〜10回に分けて納めるので、1回分=1か月分ではない
- 転出後は旧住所で年間保険料が再計算され、納めすぎは還付、不足は追加請求になる。還付通知の受け取りと口座の維持に注意する
- 保険料の料率は市区町村ごとに違い、しかも前年の所得で計算される。移住1年目は収入が下がっても保険料が高くなりやすいので、軽減・減免制度の有無を窓口で確認しておく
公式情報・確認先
この記事は2026年7月26日に確認しました。必要書類・窓口・保険料は自治体や加入状況で異なるため、手続き前に最新の公式情報をご確認ください。


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