後期高齢者医療制度は都道府県ごとの広域連合が運営しているため、同じ都道府県内の引越しなら資格は続きますが、県外へ移る場合は資格を取り直す手続きが必要になります。その際の鍵になるのが「負担区分等証明書」です。
後期高齢者医療は「都道府県単位」で運営されている
75歳以上(一定の障害がある人は65歳以上)が加入する後期高齢者医療制度は、市区町村ではなく、都道府県ごとに設けられた「後期高齢者医療広域連合」が保険者です。保険料の決定や資格の管理は広域連合が行い、申請の受付や証の交付といった窓口業務は市区町村が担当しています。
この二段構えの仕組みが、引越し手続きを少しややこしくしています。国民健康保険が市区町村単位なのに対し、後期高齢者医療は都道府県単位なので、同じ都道府県の中で引越すのか、都道府県をまたぐのかで手続きの内容がまったく変わるのです。
親を地方へ呼び寄せる、あるいは親が地方へ移住するというケースでは、たいてい県境をまたぎます。同居や近居のために呼び寄せる場合の世帯の扱いは遠方に住む親を呼び寄せる場合の住民票・世帯の手続きにまとめています。要介護認定を受けている場合は、親の地方移住・介護保険の手続き|要介護認定の引継ぎ方法もあわせて確認してください。以下は「県外へ移る場合」を中心に説明します。
同じ都道府県内の引越しなら手続きは軽い
まず、同じ都道府県内で市区町村が変わる場合です。この場合、加入している広域連合は変わらないため、資格は途切れません。
北海道後期高齢者医療広域連合は、道内での転居について特別な手続きは不要とし、後日、新住所が記載された資格確認書が新住所地の市区町村から交付されると案内しています。手元にある古い資格確認書は、旧住所地または新住所地の市区町村窓口へ返却します。
東京都内での転出も同様で、板橋区は都内へ転出する場合には後述の証明書が不要としています。もちろん、住民票の異動(転出届・転入届)自体は通常どおり必要です。
県外へ移るときは「負担区分等証明書」を必ず受け取る
都道府県をまたぐ場合は、旧住所の広域連合の資格を失い、新住所の広域連合であらためて資格を取得することになります。このときに必要なのが「後期高齢者医療負担区分等証明書」です。
転出時(旧住所の市区町村)では、転出届を出す際に、資格確認書などを返却したうえで負担区分等証明書の交付を受けます。この書類には、医療機関の窓口負担割合や高額療養費の自己負担限度額の判定に使う所得区分が記載されており、転入先にその情報を引き継ぐためのものです。これがないと、転入先で所得区分の判定ができず、窓口負担の扱いが正しく反映されないおそれがあります。
転入時(新住所の市区町村)では、転入届と一緒に、この負担区分等証明書を後期高齢者医療の担当窓口へ提出します。手続き後、新しい資格確認書などが郵送で届きます。板橋区の場合、申請から1週間程度で簡易書留により郵送されると案内しています。
なお、特定疾病療養受療証(人工透析などで自己負担が月1万円に抑えられる証)を持っている場合、それも返却したうえで、転入先であらためて申請が必要です。自動では引き継がれないので注意してください。
「保険証」は資格確認書・マイナ保険証に置き換わっている
ここ数年で、後期高齢者医療の証は大きく変わりました。従来の紙の被保険者証は発行が終了し、現在はマイナンバーカードを健康保険証として使う「マイナ保険証」か、それを持たない人に交付される「資格確認書」で受診する仕組みになっています。
令和8年8月の一斉更新では、広域連合によって次のような扱いが案内されています。埼玉県後期高齢者医療広域連合の例では、8月1日時点で85歳以上の人には全員に資格確認書を交付し、84歳以下についてはマイナ保険証を持たない人に資格確認書、持っている人には「資格情報のお知らせ」を送るとしています。マイナ保険証を持っていても、申請すれば資格確認書を受け取ることは可能です。静岡市も同様の案内をしています。
引越し手続きで大事なのは、窓口で返却するもの・受け取るものが「保険証」ではなく「資格確認書」になっているという点です。「保険証が見当たらない」と探し回る前に、藤色などの資格確認書が届いていないか確認しましょう。また、マイナ保険証で受診できる人であっても、住所が変わったときの届出が不要になるわけではありません。資格そのものの異動手続きは必ず必要です。
保険料は都道府県によって金額が変わる
後期高齢者医療の保険料は、被保険者全員が等しく負担する「均等割額」と、所得に応じた「所得割額」の合計で決まります。この均等割額と所得割率は広域連合ごと、つまり都道府県ごとに定められているため、県をまたぐ引越しでは保険料の水準が変わります。
年金からの天引き(特別徴収)で納めていた場合、転出によっていったん天引きが止まり、転入先ではしばらく納付書や口座振替による普通徴収に切り替わるのが一般的です。天引きが再開されるまで半年程度かかることもあるため、転入先から届く納付書は必ず確認し、納め忘れがないようにしてください。
旧住所の広域連合では転出月の前月分までの保険料が精算され、納めすぎがあれば還付されます。還付通知が旧住所へ送られてしまうことがあるので、郵便物の転送届もあわせて出しておくと安心です。
65〜74歳で障害認定を受けて加入している場合
後期高齢者医療制度には、65歳から74歳でも一定の障害があると広域連合の認定を受ければ加入できます。この障害認定は、加入している広域連合が行うものです。
そのため、県外へ移る場合は、転入先の広域連合であらためて障害認定を受ける必要があります。板橋区のように、転出時に障害認定に関する証明書を発行している自治体もあるため、転出届を出す際に窓口で「障害認定で加入している」と伝えて、必要な書類を確認してください。
手続きが遅れると、後期高齢者医療の資格を得られない期間が生じ、その間は国民健康保険などに加入する扱いになる可能性があります。負担割合も変わるため、県外への引越しが決まった時点で早めに相談しておくことをおすすめします。
国民健康保険に加入している場合の転出・転入の届出は、国民健康保険の転出・転入手続き|県外へ引越すときの流れで解説しています。
まとめ
- 後期高齢者医療は都道府県ごとの広域連合が保険者。同一都道府県内の引越しなら資格は継続し、後日新住所の資格確認書が届く
- 県外へ移る場合は、転出時に「後期高齢者医療負担区分等証明書」を受け取り、転入届と一緒に新住所の市区町村窓口へ提出する。特定疾病療養受療証は転入先で再申請が必要
- 紙の被保険者証は廃止され、現在はマイナ保険証または資格確認書。返却するもの・届くものの名称が変わっている点に注意する
- 保険料の均等割額・所得割率は都道府県ごとに異なり、年金天引きも転居でいったん止まる。転入先から届く納付書を必ず確認する
マイナ保険証の電子証明書の有効期限についてはマイナ保険証の電子証明書の有効期限が切れたら?で解説しています。
公式情報・確認先
この記事は2026年7月26日に確認しました。必要書類・窓口・保険料は自治体や加入状況で異なるため、手続き前に最新の公式情報をご確認ください。


コメント