障害者手帳は引越しでどうなる?県外転出時の手続きと障害福祉サービスの引継ぎ

手帳と2つの町を結ぶ矢印のイラスト 介護・高齢者移住

障害者手帳は、県外へ引越しても住所変更の届出をすれば使い続けられます。引き継がれないのは、手帳ではなく「障害福祉サービス受給者証」のほうです。 そして療育手帳には、都道府県ごとに判定基準が違うという固有の問題があります。

手帳・サービス・手当で扱いが違う

まず全体像です。移住では、次の3つを別々に考える必要があります。

種類 県外転出したときの扱い
障害者手帳(身体・療育・精神) 住所変更の届出で引き続き使える
障害福祉サービス受給者証 引き継がれない。転入先で新規申請
各種手当・医療費助成 転出先で新たに申請が必要。自動では移らない

「手帳が使えるなら大丈夫」と考えると、サービスの支給決定が途切れます。実際の生活に効くのは、下の2つのほうです。

手帳そのものは使い続けられる

身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳は、いずれも転入先で住所変更の届出をすれば使えます。手帳を作り直す必要はありません。

春日部市の案内を例にすると、流れはこうです。

  • 転出のとき:手帳と転出先住所、マイナンバーが確認できるものを持って、障害福祉の担当課へ
  • 転入のとき:市民課で転入手続きをした後、手帳・印鑑・マイナンバーが確認できるものを持って障害福祉の担当課へ

精神障害者保健福祉手帳と自立支援医療については、転入時に手帳・自立支援医療受給者証・健康保険証・マイナンバーを持参します。自立支援医療は都道府県・指定都市が実施主体なので、県をまたぐと手続きが必要になります。転出前に、転出先の窓口に必要書類を確認しておいてください。

なお、施設に入所している場合は住所地特例などの扱いがあり、転出元の市町村での手続きが必要になることがあります。個別性が高いので、必ず窓口で確認してください。

療育手帳は、都道府県で基準が違う

ここが、この記事でいちばん注意してほしい部分です。

療育手帳は、身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳と違い、法律に根拠のある制度ではなく、国の通知に基づいて都道府県・指定都市が独自に運用しています。そのため、名称からして統一されていません。東京都の「愛の手帳」、埼玉県の「みどりの手帳」など、地域ごとに呼び方が違います。

問題は名前だけではありません。こども家庭庁の資料は、次のようなばらつきを指摘しています。

項目 ばらつきの実態
知的障害のIQの上限値 「概ねIQ75」が52%、「概ねIQ70」が27%
障害程度の区分数 2区分〜7区分
使用する検査ツール 複数存在し統一されていない

そして同資料は、手帳所持者が他の自治体に転居した際に判定に変更が生じる可能性があることを明記しています。

つまり、こういうことが起こりえます。

  • 前の県ではB判定だったが、移住先ではA判定になる(またはその逆)
  • 区分の数が違うため、受けられるサービスの範囲が変わる
  • 前の県では手帳の対象だったが、移住先の基準では該当しなくなる

これは制度の欠陥というより、各都道府県が独自に運用してきた歴史の結果です。国も問題として認識しており、判定基準の統一化に向けた検討が進んでいます。 統一的な判定ツール(ABIT)の開発・標準化が令和4〜6年度にかけて行われ、実装試験とガイドライン策定が予定されていますが、適用開始の時期は示されていません。

したがって、当面はこう構えてください。

療育手帳を持って県外へ移住する場合、移住先の都道府県の判定基準を事前に確認する。

移住先の都道府県の障害福祉担当課、または児童相談所・知的障害者更生相談所に問い合わせれば教えてもらえます。判定が変わる可能性があるかどうかを、移住先を決める前に聞いておく。 これが最も重要な事前確認です。

引き継がれないのは「受給者証」

障害福祉サービス受給者証は、市町村が支給決定を行うものです。市町村が変われば、支給決定はいったん切れます。

春日部市の案内では、転入時に前住所地から返還していない受給者証を持参し、新規申請が必要とされています。あわせて障害支援区分認定証明書も必要です。

ここで押さえておきたいのは、次の2点です。

① 障害支援区分は引き継げるが、支給量は引き継がれない

障害支援区分の認定は、転出元の市町村が発行する「障害支援区分認定証明書」によって転入先に引き継げます。しかし、何時間のサービスを受けられるか(支給量)は、転入先の市町村が改めて決定します。 同じ区分でも、市町村の基準や事業所の状況によって支給量が変わることがあります。

② 転出前に、証明書を必ずもらっておく

転出の手続きのときに、障害支援区分認定証明書の発行を依頼してください。これを忘れると、転入先で区分認定からやり直しになり、サービス開始まで時間がかかります。

そして、事業所の確保は別の問題です。支給決定が下りても、地域に受け入れられる事業所がなければサービスは使えません。移住先を決める前に、必要なサービスを提供している事業所があるかを確認することが、手続き以上に重要です。相談支援事業所に早めにつながっておくと動きやすくなります。

介護保険サービスとの関係については「親の地方移住・介護保険の手続き|要介護認定の引継ぎ方」もあわせてご覧ください。

期限がある手続きに注意

手当や医療費助成は、転出時に「手続き不要」とされていても、転入先で申請しなければ受けられません。 自動では移りません。

しかも、申請に期限があるものがあります。春日部市の例では、重度心身障害者医療費助成は「転入日の翌日から15日以内」に申請すれば転入日から助成されるとされています。この期限を過ぎると、申請日からの助成になり、空白期間が生じます。

制度 転出時 転入時
特別障害者手当・障害児福祉手当 手続き不要 新住所地で申請が必要
在宅重度心身障害者手当 喪失手続きが必要 資格申請が必要
重度心身障害者医療費助成 喪失手続きが必要 期限内の申請で転入日から助成

自治体によって制度の名称も期限も違います。転入手続きの当日に、障害福祉の担当課ですべてまとめて相談するのが確実です。転入届を出したその足で回ってください。

なお、障害基礎年金・障害厚生年金は住所変更の扱いになります。マイナンバーが登録されていれば住所変更届は原則不要です(「引越しで国民年金の住所変更は必要?届出が不要になるケース」)。

動く順番

  1. 移住先の候補段階:療育手帳なら、移住先都道府県の判定基準を確認する。必要な障害福祉サービスの事業所があるかを確認する
  2. 転出のとき:手帳の住所変更届に加えて、障害支援区分認定証明書の発行を依頼する。手当・医療費助成の喪失手続きを済ませる
  3. 転入のとき:転入届の当日に障害福祉担当課へ。手帳の住所変更、受給者証の新規申請、自立支援医療、手当・医療費助成の申請をまとめて行う
  4. 期限を確認:医療費助成など、転入日からさかのぼって適用されるための申請期限を必ず聞く

まとめ

  • 障害者手帳(身体・療育・精神)は住所変更の届出で引き続き使える。作り直しは不要
  • ただし療育手帳は法律に基づく制度ではなく都道府県ごとの運用。IQの上限値は「概ね75」が52%・「概ね70」が27%、区分数は2〜7区分とばらつきがあり、こども家庭庁も転居で判定が変わる可能性を認めている。移住先の判定基準を事前に確認する
  • 判定基準の統一化は検討中(判定ツールABITの開発・標準化)だが、適用時期は示されていない
  • 障害福祉サービス受給者証は引き継がれず、転入先で新規申請。転出時に障害支援区分認定証明書をもらっておく。区分は引き継げても支給量は転入先が改めて決定する
  • 手続き以上に重要なのが事業所の有無。移住先を決める前に、必要なサービスを提供している事業所があるかを確認する
  • 手当・医療費助成は転入先で申請しなければ受けられない期限内の申請で転入日から助成される制度があるため、転入届の当日に障害福祉担当課でまとめて相談する

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